不動産コラム/ COLUUMS
不動産の仲介手数料とは?そして値引き交渉はおすすめできない理由とは?
公開日: 2023年9月9日 更新日: 2023年11月18日
仲介手数料とは
不動産の売買の際に売り主と買い主の間、賃貸物件の貸し主と借り主の間に不動産会社が入って、取引の仲立ちを行うことを仲介といいます。物件の調査、物件のPR活動、双方の条件の調整や事務など仲介において不動産会社が行う業務は多岐にわたります。この業務の対価が仲介手数料です。
A:不動産の売り主・貸し主
B:不動産の買い主・借り主
不動産取引が成立するには不動産を提供する側のAと、提供を受ける側のBが必ず必要になります。
仲介手数料はAとBそれぞれが支払うことになっていますが、契約する不動産会社は別の不動産会社でもかまいません。
この仲介手数料は成功報酬となっており、売買や賃貸借契約が成立しなかった場合は支払いの必要がありません。
仲介手数料はいくらなのか?
「不動産の売買」「賃貸物件の賃貸借契約」それぞれについて仲介手数料の上限額が宅地建物取引業法によって定められており、この金額以上徴収してはいけないことになっています。
売買金額(税抜) | 仲介手数料 |
---|---|
200万円以下部分金額 | 売買価格×5% |
200万円超~400万円以下部分金額 | 売買価格×4% |
400万円超部分金額 | 売買価格×3% |
この表だけだとわかりにくいと思いますので、1,000万円の売買を例にとって仲介手数料を説明しましょう。
仲介手数料は10万円+8万円+18万円となり、合計で36万円(消費税抜き)となるわけです。なお、仲介手数料には消費税がかかるので36万円×110%=39万6千円が必要になります。
仲介手数料をこのルール通りに計算するのは少々面倒なので一般的には即算式を使います。
売買金額(税抜) | 仲介手数料(即算式) |
---|---|
200万円以下の場合 | 売買価格×5% |
200万円超~400万円以下の場合 | 売買価格×4%+2万円 |
400万円超の場合 | 売買価格×3%+6万円 |
即算式とはこの計算式を使うと簡単に計算できますという意味です。
面倒な計算をしなくても、上記即算式を使えば1,000万円×3%+6万円=36万円となり同じ計算結果が得られます。
売買金額が小さいほど手数料の上限は高くなっています。
なぜかというと、100万円の物件でも1億円の物件でも不動産会社が行う事務の手間は変わらないためです。
そのため売買金額が小さくなるほど手数料を高くとってもよいというルールになっているのです。
とはいえ、近年不動産としての価値が著しく低い物件が活用されないことが社会問題となっています。売買金額が10万円といった非常に少額な取引においては、5%では事務コストが全く回収できません。
これでは不動産の流通を担うはずの不動産会社は扱いませんので、売買が行われずこのような不動産を必要とする人への流通が成立しないのも当たり前です。仲介手数料は最低〇〇万円といったようなルールにして欲しいものです。
賃貸物件の仲介手数料
家賃1ヶ月分が仲介手数料の上限です。
これも、消費税がかかるので家賃が10万円の物件であれば、10万円×110%=11万円が必要となります。
仲介手数料を安くする方法
ここからは主に不動産の売買について説明します。
不動産を売る場合、買う場合について仲介手数料を安くする方法についてまとめました。是非参考になさってください。
【売る】仲介ではなく買取りを選択する
不動産会社に直接物件を購入してもらう「買取り」という方法があります。
仲介ではないので仲介手数料はかかりません。
物件を買い取った不動産会社は後日利益を乗せて販売することになります。
当然その利益の分だけ売却金額は安くなってしまいます。目安として仲介の場合の2割程度は安くなると考えてよいでしょう。この方法は確実に早く売りたい場合、一般に公開したくない場合などに利用するとよいでしょう。
【売る・買う】仲介手数料の値引きの交渉
前の章で仲介手数料の計算方法についてお伝えしました。
繰り返しになりますが、この仲介手数料は上限であって下限はありません。極論0円でも問題はないのです。仲介手数料をこの上限の金額以内でいくらに設定するかは、不動産会社との契約条件で決まります。
様々な不動産の情報サイトをみると「仲介手数料は値引きの交渉が可能である」という記述がよく見られます。実際に値引きの交渉は不可能ではありません。
しかし、あまり値引き交渉はおすすめできません。
値引き交渉をおすすめしない理由
値引き交渉をおすすめしない理由は、この記事を書いている私達が不動産会社だからではありません。
不動産会社という立場から離れて、客観的に考えても値引きはおすすめしにくいのです。
不動産を売る場合、買う場合でそれぞれ値引きの交渉はありえますが、おすすめできない理由は以下のとおりです。
1. そもそも仲介手数料はたった3%しかないから【売る・買う】
2. 仲介手数料は広告費用の元手となるから【売る】
3. 値引き交渉は担当者のモチベーションを下げるから【売る・買う】
4. 売却金額が安くなってしまう可能性が高まるから【売る】
5. 対応を後回しにされる可能性があるから【売る・買う】
6. ひどい物件を買わされる危険性があるから【買う】
それぞれ説明していきましょう。
1.そもそも仲介手数料はたった3%しかないから【売る・買う】
不動産を売ったり買ったりする立場からすると、仲介手数料を1%値引いてもらったとしてもたった1%しか安くなりません。しかし、不動産会社の立場からすると非常に大きな違いとなります。3%から2%になると売上が33%も少なくなってしまうのです。
不動産会社はほぼ仲介手数料だけが収益源です。売上が33%も少なくなったらとても大変だということはすぐにご理解いただけるかと思います。
2.仲介手数料は広告費用の元手となるから【売る】
不動産の売却依頼を受けた不動産会社は様々な方法でPR活動を行います。
新聞の折込チラシを入れる、フリーペーパーに広告を掲載する、SUUMOやHOME’Sなどの不動産情報サイトに掲載するなど、これらにはすべて安くはない費用がかかります。
この費用は仲介手数料から捻出されます。
仲介手数料をケチってしまうと当然これらの広告にしわ寄せがきます。売れなくなる可能性が高くなったり、売却期間が長期化したりするといった弊害が現れます。
3.値引き交渉は担当者のモチベーションを下げるから【売る・買う】
売る側であっても買う側であっても、不動産会社はプロとして頼るべきパートナーです。
不動産の契約には法律や建築など非常に難しい要素が多々あります。
また、その地域の不動産の相場などの生の情報を知ることも、高く売るあるいは安く買うためには必要になります。
これらの知識や経験を持っているのが不動産会社で、不動産会社に全力でサポートをしてもらう必要があるのです。
しかし、「仲介手数料を値引きしてください」という交渉をするというのは、不動産会社のサポートの価値を低く評価していることに他なりません。担当者としては努力を安く買い叩かれているように感じて不快になることもあるでしょう。
そのせいで対応が冷たくなってしまうかもしれません。
また、担当者の給与は仲介手数料に応じて増減する会社もあります。それであれば当然給料が下がるので更なるモチベーションが低下は避けられません。
4.売却金額が安くなってしまう可能性が高まるから【売る】
売却金額が安くなってしまう可能性が大きく高まります。
不動産を高く売るためには、不動産会社による様々な営業活動が必要です。
しかし、仲介手数料が低くなれば儲からないので、熱心に営業活動を行わなくなる可能性が高くなります。
また、2.で説明したように広告費用もあまりかけられなくなります。そのため高く買いたいと思っている人がいたとしても、そのような人の目に触れるような営業活動ができなくなってしまいます。
また、収益を確保するための手段として「囲い込み」という不正行為が行われる危険性も大きく高まります。囲い込みを行えば買い手からも仲介手数料を確実にもらえるので、値引きが可能になります。
※囲い込みについては「不動産業者が教える「囲い込み」を防止する方法とは?」を御覧ください
もし、通常通り営業活動を行えば3,000万円で売れた物件が、囲い込みが行われたり、広告費を削ったりしたことで2,500万円になってしまったとしたら、仲介手数料がゼロ円だったとしても大損ですよね。
5.対応を後回しにされる可能性があるから【売る・買う】
これは3.のモチベーションの低下とも関係するのですが、担当者は大切なお客様から優先的に対応します。
当然売買金額が高いお客様は大切でしょうが、担当者も人間ですから、担当者を全面的に信頼し協力を惜しまないお客様についても大切に扱う可能性が高いのです。
仲介手数料の値引き交渉をしてくるお客様はその逆だといえるでしょう。
担当者が忙しいときは対応が後回しにされて、売却や購入のチャンスを逃してしまうかもしれません。
6.ひどい物件を買わされる危険性があるから【買う】
一般の人にはわからないような欠点のある物件を買わされてしまうかもしれません。
買い主にとって著しい不都合については事前に説明することが義務付けられています。
例えば雨漏りなど物理的な欠陥、近隣に高速道路があって騒音があるなど環境的な欠陥、自殺があったなどの心理的な欠陥などです。
これら欠陥のことを瑕疵(かし)といいますが、これらの瑕疵は契約前の重要事項説明で必ず説明しなくてはなりません。
しかし、どのような瑕疵であれば説明しなくてはならないという明確な基準はありません。
売り主は近所に迷惑な隣人が住んでいて色々嫌がらせをしてくるので、その家を売ろうとしているという事実を隠して売ろうとするといったことも考えられます。
隣人がどんな人かを知らせる義務は定められていないので、知らぬふりをして売ってしまうかも知れません。
それでも仲介手数料を安くしたいと考えるなら
結局不利益がない方法で仲介手数料を安くする方法はないというのが結論です。
物件を買うならば1%仲介手数料を値引きしてもらうより、1%購入金額を値引きしてもらうほうがはるかに簡単ですし、不動産会社の利益や担当者のモチベーションを損なう心配もありません。
多くのケースでは売出し価格は、売り主がこれくらいで売りたいと希望している価格、あるいは相場から不動産会社が適正だと判断した金額より1~2割程度高めに設定されます。
普通は値引き交渉の余地があるのです。これくらいで売りたいという本音の金額は売出し金額より実際には低いのです。
そのため1%仲介手数料を安くするより、5%購入金額を下げるほうが簡単なことが多いのです。
不動産会社には仲介手数料を安くしてもらうより、値引き交渉で力を発揮してもらうほうがずっと利益になります。
また、物件を売るなら仲介手数料を安くすることを考えるのではなく、信頼できかつその地域での営業力をもっている不動産会社と契約し1円でも高く売ってもらうように考えるべきです。不動産会社の選び方については「家を高く売るなら不動産会社選びが最重要・ベストな選び方とは」に詳しくまとめましたのでぜひご覧ください。
そして、不動産会社に全力を出してもらうために売り主側も協力することで、プロとしての力を充分に発揮してもらうべきでしょう。それが最も利益につながる方法です。
まとめ
仲介手数料とはどのような費用でいくら必要になるのか?
また仲介手数料を安く浮かせようとするとどのような不利益があるのか?について詳しく説明いたしました。
繰り返しになりますが、不動産の売買には専門的な知識が必要であるため、不動産会社というプロの力を借りるべき取引です。そのプロの力を充分に発揮してもらうために仲介手数料の値引きはするべきではないということです。
国土交通大臣の定めとは建設省告示1552号「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」の第四を指します。
「宅地建物取引業者が宅地又は建物の貸借の媒介に関して依頼者の双方から受けることのできる報酬の額(当該媒介に係る消費税等相当額を含む。以下この規定において同じ。)の合計額は、当該宅地又は建物の借賃(当該貸借に係る消費税等相当額を含まないものとし、当該媒介が使用貸借に係るものである場合においては、当該宅地又は建物の通常の借賃をいう。以下同じ。)の一月分の一・一倍に相当する金額以内とする。この場合において、居住の用に供する建物の賃貸借の媒介に関して依頼者の一方から受けることのできる報酬の額は、当該媒介の依頼を受けるに当たつて当該依頼者の承諾を得ている場合を除き、借賃の一月分の〇・五五倍に相当する金額以内とする。
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