不動産売却のコツ
不動産コラム/ COLUUMS
損しないための不動産の売り出し価格の決め方とは
公開日: 2022年9月9日 更新日: 2022年10月22日
売出し価格は誰が決めるのか?
中古住宅のチラシには、大きく販売価格が示されています。
「手ごろだな」と思うものから「少し高いのではないのかな」と感じるものまであります。では、この価格は、いったい誰が決めているのでしょうか。
結論からいえば、決めているのは売り主となる「あなた」です。ただし、値付けを自分で好き勝手に決められるわけではありません。
できるだけ高く買ってもらえる人を見つけるために妥当な価格に設定する必要があります。
売出し価格を決定するまでの手順
では、売り出し価格はどのように決めたらよいのでしょうか。
手順を追ってみていきましょう。
大体の売出し相場の目安をつかむ
まず周辺相場をつかみましょう。
不動産には相場があります。相場から大きく外れた高い価格では誰も目を向けてくれません。
逆に、安すぎる価格にすると、売り主である自分が損するだけでなく「何かいわくつきなのでは」と疑われてしまう可能性があります。
ですから、周辺相場を知ることがはじめの一歩です。
● マンションは同じマンションの事例が参考になる
同じマンション内で、過去に売り出された物件はないでしょうか。
過去の事例があれば、そのときの価格が参考になります。まずは売り出された事例がないかをインターネットで調べてみましょう。管理員さんに聞いてみるのも一つの方法です。
● REINS Market Information(レインズ・マーケット・インフォメーション)を使って近隣の売買実績から推測する
このサービスを使うと、以下の公益財団法人が保有する日本全国の不動産の取引情報を閲覧することができるのです。
[東日本不動産流通機構/中部圏不動産流通機構/近畿圏不動産流通機構/西日本不動産流通機構]
http://www.contract.reins.or.jp/search/displayAreaConditionBLogic.do
このサービスを使って相場を知るには上記のURLにアクセスしてみましょう。
マンションや戸建ての条件を入れる欄があるので、たとえば「戸建て」で「埼玉県」「中央部」とエリアを入力します。
そのなかで「川口市」をクリックすると、さらに細かい条件があるので、自分の住まいの条件に近いものを入力します。
ここでは、一例として「武蔵野線」「東川口駅」「徒歩15分以内」「土地面積840m2以上」「建物面積860m2以上」「築年数15年超20年以内」と入力すると、過去の取引事例が出てきます。
●REINS Market Informationで類似の物件がみつからない場合は…
このサービスを使っても自分の住まいと類似した条件をもつ物件がみつからないことがあります。
そんなときは、次のサイトを見てみましょう。匿名ですし、すぐに答えが返ってくるので便利で
スミタス:
https://sumitas.jp/sell/quick/
こちらで住所や建物構造、築年などを入力します。
たとえば、川口市のとある住所を入力すると1931万円となりました。細かい条件は加味されていませんが、おおよその目安を知る方法にはなります。
売却で「これ以上は絶対必要」という売却価格を決める
おおよその相場売却の目安がわかったら次は売却する希望最低価格を考えましょう。
誰にでも「これ以上は下げられない」という価格の最低ラインがあるのではないでしょうか。
「ローンの残債を売却した分であてたい」などの理由もあるはずです。
「住み替え」であれば、売却で得た資金を、新しい住まいの頭金にするといった計画もあるでしょう。
ただ、最低価格で売り出すことをお勧め薦めしているのではありません。ポイントは、頭の中に「ぎりぎり許容できるラインを定めておく」ということです。
不動産会社へ査定依頼
最低の売却価格を決めたら不動産会社に声をかけましょう。
複数の不動産会社に連絡して、住まいの査定を依頼します。
複数選定するにあたって、大切なことのは依頼する不動産会社の規模を同じにしないことです。大手だけでなく地元で長年営業している不動産会社にも依頼しましょう。
また、戸建てを売るなら戸建てに強い会社、マンションならマンションの実績が多いところにしたいものです。そのような観点から2~5社程度をピックアップして依頼します。
不動産会社が家に来訪し査定を行う
インターネットの一括不動産査定サービス(例:HOME4U: https://www.home4u.jp/sell/)
を使って、自分の住まいのおおまかな住所(町名+何丁目まで)を入力すれば、不動産会社から大体の、査定価格を送ってもらえます。
これは「机上査定」というもので、不動産会社は、現地を見ません。サイトの情報だけで大まかな価格を提示します。
しかし、机上査定にはその住まいが固有にのもつ強み、あるいは弱みは反映されません。
やはり、担当者に現地に来てもらい住まいを見てもらい、査定価格を出してもらう必要があります。
ここで「多くの不動産会社を呼ぶのがイヤだ」と思うことがあるかもしれません。
そんなときは、机上査定を依頼し、そのときの会社の対応をみて、来てもらう会社を選んでも構いません。
しかし、インターネット一括不動産査定サービスに参加している不動産会社は、ごく一握りであることに注意が必要です。これらのサービスは営業手数料が高いため、特に地元の良心的な不動産会社は参加していないことがほとんどです。
良心的な地元の会社を選びたいと思った場合、やはり直接不動産会社に連絡をとることは必須です。
5不動産会社が査定価格提示・売出し価格決定
現地訪問で得られた情報を元に、不動産会社は数日程度で査定価格を提示してきます。
この価格は「今すぐ売り出して3カ月以内に売れる価格の目安」というイメージです。
不動産会社は様々な条件を加味して査定価格をはじき出します。
最近取引のあった不動産のなかで似た条件をもつ物件の成約価格、また、成約までの期間、市況の動き、今回売りに出そうとする物件の特徴などを総合的に勘案して査定価格を提示するのです。
ただ、この価格は机上査定よりは実情に近くなるものの「確実に売れる価格」ではないことに注意しましょう。
さて、次は、この査定価格を基に不動産会社のアドバイスを得て、あなた自身が売値を設定します。
もし、売るまで3カ月以上かかってもよいのであれば、最初は少し高めに設定してもよいかもしれません。相場よりも高くても気長に待っていれば売れることもあるためです。
当然ながら、待っても売れない場合は値下げしなければならないこともあります。
また、買いたいという人が見つかっても、多くの場合は不動産会社を通じて、買い主との間で購入条件の「交渉」が発生します。
ですから「値下げして欲しい」という交渉があると思っておいたほうがよいでしょう。
もちろん、売却価格そのままで買ってもらえることもありますが、「交渉がある」ことを前提にして、少し値引きの余地を残しておきたいものです。
不動産はどれくらいの期間で売れるのか
ところで、不動産は、売り出してからどのくらいで売れるのでしょうか。
データでは、ほぼ売り出しから平均3カ月以内で売れるという結果が出ています。
2022年1月に公表された「首都圏不動産流通市場の動向(2021年)」(公益財団法人東日本不動産流通機構=通称:東日本レインズ)のデータがあります。
東日本レインズは、東日本で唯一の公的な不動産物件情報交換組織です。コンピューターオンラインで結ばれた不動産業者から物件情報が登録されています。
以下は、首都圏における2021年(2021年1~12月)の販売データです。
これをみると、ほぼ3カ月程度で成約しています。
コロナ禍となった2020年以降は少し成約までの日数が延びていますが、2021年は、再び社会活動が活発化しており、2020年より成約までの日数が短くなっています。
引用:http://www.reins.or.jp/pdf/trend/sf/sf_2021.pdf
公益財団法人東日本不動産流通機構
値引きに対する考え方
たとえば、あなたが中古住宅を購入しようとすると仮定しましょう。販売されている価格でそのまま即決しますか?
そうではないですよね。大きな買い物なので当然ながら少しでも安く買いたいと思うでしょう。不動産会社に「予算オーバーなので、●百万円さげてもらえたら買います」と伝えてみたくなるのではないでしょうか?
また、実際にその金額では買わないけど、●百万円値引きしてくれれば買いたいと思うかもしれません。
反対に自分の不動産を売る側になって考えてみましょう。その立場では値引きには応じたくないものです。
しかし、売り出し価格そのままで売れる事例はあまり多くはないと考えておいたほうがよさそうです。
値引きの金額は数万円とか、端数だけの場合もあります。売り主と買い主の交渉の結果、お互いが納得すれば、その金額に落ち着くのです。
値引きに相場はありませんが、5%~10%程度の金額ダウンは十分ありえます。
長期にわたって売れない場合は、買い手が現れたときに「◯◯万円値引きしてくれれば買いたい」といわれたら、がぐらつくこともあるでしょう。
ですから、先ほどお伝えしたようにあなた自身が「これ以上はローンの残債があるので下げられない」という明確な最低金額のラインを持っておくことが大切なのです。
値引きを打診されたときに納得いかなければ、受け入れる必要はありません。
期間に余裕があれば次の購入希望者を待つこともできます。
また「不動産の現況調査費用などを負担する」といった別の費用を負担する提案をして、相手が納得すれば、値引きをせずに売れる可能性はあります。
ただ、値引きをしないと決めた場合に、強気にすぐにつっぱねてしまう態度は避けたほうがよさそうです。
こういう態度でいると、購入希望者は見つかりにくくなるかもしれません。
売買は、お互いの合意で成り立つものですから、不動産会社を通じて相手の言い分を聞いてもらい「どうすれば歩み寄ることができるか」を考えましょう。
このとき、頼りになるのが不動産会社です。
交渉や取引の実績が多い不動産会社や担当者であれば、あなたの思いをくみ取り、あなたの立場にたってアドバイスしたり、落としどころを提案したりしてくれます。仲介を依頼する前には、担当者とじっくり話し合いましょう。そして、人となりをみて、「この人なら依頼してもいい」と思える会社や人にお願いするようにしましょう。
売出し価格の注意点
高すぎる売出し価格をつけてはいけない
このように見てくると不動産には、「売り出し価格」と、交渉を経て決まる実際の「成約価格」の二つがあることがわかります。
この二つの価格の差を「乖離率」といいます。乖離率が小さいほど場のニーズに合致した価格で売り出されているため早く売れるといえます。逆に、二つの価格が離れているほど、売れるまでに時間を要します。
つまり、売り出し価格が周辺相場よりも高すぎる場合は、売れ残ってしまう確率が高くなるのです。
そこで、値下げすると、チラシには「値下げしました!」と大きく表示されます。
以前から検討していた潜在的な購入希望者がいたら「もう少し待てばさらに下がるのでは」という思いを抱かせるかもしれません。
そうなると、いつまでたっても売れないということが起こります。これによってず、本来の市場価値よりも成約価格が大きく割り込んでしまう可能性が出てきます。
こうならないためには、最初の値付けがいかに大事かがよくわかります。自分の希望価格に加えて、頼りになる不動産会社を見つけ、相談しながら価格を決めていくのがポイントです。
売れないからといってちょくちょく下げない
売り出し価格が適正であれば、売り出しからほぼ3カ月以内には売れるでしょう。
ただ、なかには、周辺に似たような物件の売り出しが多いなどの理由から「内覧希望すら来ない」ということがあります。
こうなると、不動産会社からも値引きを提案される可能性が高まります。しかし毎月50万円ずつとか、100万円ずつといったようにちょっとずつ価格を下げるのは、得策とはい言えません。
それはさきほどもお伝えしたように、購入者側に「まだ下がるかもしれない」と思わせるからです。
内覧がないからといって、潜在的な購入希望者が全くいないとは言い切れません。
下げるなら「思い切って値下げする」覚悟が必要でしょう。
ただその場合も価格設定には駆け引きが必要です。不動産会社とよく相談しましょう。
もし、内覧があるのに成約に結びつかないのであれば、何がよくなかったかを不動産会社を通じて聞いてもらい、次の購入希望者との交渉に活かすことができます。
何か気に入らない点があって購入に至らなかったのであれば、そこをリフォームなどでカバーするといった改善策があるかもしれません。
あるいは、内覧した人が欲しいと思った理由を教えてくれたのであれば、その点を全面に打ち出して価格を下げないのも一手です。
いずれにしても、購入希望者の心理を知るのは、プロの不動産会社です。相談に乗ってもらい適切なアドバイスをもらいましょう。
急いで売ろうとすると損をする
住まいは、市場価格よりある程度安く設定されていれば、早く売れるのは事実です。
買い替えの場合は、売った住まいで得た資金を元手に、買い替え先の頭金にするのが普通でしょう。
この場合、次の住まいへの入居のタイミングを合わせて、売却し、ローンの時期が重ならないようにするのが理想的です。
ただ、タイミングを合わせるために「売り」を急いだ結果、購入希望者からの「●百万円さげてほしい」という要望を受け入れざるをえないこともあるでしょう。
そうなると自分が予定していた「最低売却価格」を割ってしまうことがあります。こうなると資金計画に狂いが生じますね。
つまり、あまりにも急ぎすぎると「ソンをする」ということです。
そこで、一般的には、買い替えは、「売り先行」となりますが、条件を満たせるのであれば「買い先行」にするのも手です。
「買い先行」は、次の住まいを見つけたあとで、自分の住まいを売りに出す方法です。ゆっくり売りに出すので、余裕をもって売却活動に取り組めます。
ただ、問題となるのは、二重ローンを抱えてしまうこと。このため、破綻しない資金計画が必要です。
一時的に二重ローンになっても払っていけそうな方にお勧めの方法です。売却する住まいのローンがすでに終わっている方や、住まいが好立地ですぐ売れる、という方にも適しています。
また、二重ローンにならないための住み替えローンを扱っている金融機関もありますので、不動産会社に相談してみるのも良いでしょう。
まとめ
「住まいの適切な売り出し価格を決める」ことには、いかに適切なアドバイスができる不動産会社を見つけ出せるかが重要であることがわかるでしょう。価格を決める段階が、「いつまでにどのくらいで売る。その費用をどの程度次の住まいに充てるか」という一連の流れのスタート地点になるからです。
最初の不動産会社選びの際には、見積もりの比較だけでなく、不動産会社の担当者や会社の実績を重視して選ぶようにしましょう。
きちんとした身なりや期限までに依頼したことをやってくれることなどの対応力はもちろん、具体的な質問をして複数社を比較検討します。
よいことばかりをいう会社ではなく、デメリットや本音も伝えてくれる会社が安心です。また、地元で長年、営業を続けている不動産会社であれば、どのような住宅が売れやすいか、ということも熟知しています。
不動産会社を選ぶ際には、いずれの会社にも「価格はどうやって決まるのですか」と尋ねてみて、詳しく説明してくれる、親身になって対応してくれるようなところを選ぶのがポイントです。
ハナイアーバンプランニングは、埼玉県南部、隣接する東京都エリアに強みをもち、20年以上、地元で愛されてきました。多数の実績をもち、戸建てやマンションの売買、土地活用、任意売却、空き家管理など不動産の総合アドバイザーとして、皆様のお役に立つよう、日々精進しております。ぜひ一度、お問い合せ下さい。
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