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家を建てるなら、土地を売るなら、必ず知っておきたい市街化調整区域とは?
公開日: 2021年9月21日 更新日: 2025年5月19日
目次
写真:TOKO / PIXTA(ピクスタ)
家を建てるなら、その土地に家が建てられるかどうかを知っておきたいものです。こう聞いて「え?売られている土地なら家は必ず建てられるのでは?」と思った方がいらっしゃるでしょう。残念ながら、どの土地にでも家を建てられるわけではありません。ではどんな土地であれば家を建てられるのでしょうか。また、相続した土地が家を建てられなかったら、売却はしづらいかもしれません。こうならないために知っておきたいことがあります。詳しく見ていきましょう。
家を建てられるのは原則として「市街化区域」のみ!
家が建つというのは、その周辺も含めて街ができることを意味します。もし、家があちこちに乱立したら…。街づくりの観点からみると、工場や住宅、大規模な店舗があちこちにでき、地域が暮らしにくくなってしまいます。そこで、行政の側からみると、家が建つエリアを決めておかなければなりません。
そこで、適切な街づくりのための「都市計画法」という法律があります。
これは、その土地に家が建てられるかどうかを決めたものです。
都市計画法では、土地は
・「市街化区域」
・「市街化調整区域」
・「非線引き区域」の3つのエリアに分けられています。
住宅の建築が認められているのは「市街化区域」のみ。「市街化調整区域」では原則として、宅地造成などの開発や一般住宅の建築は認められていません。ただし、定められた条件を満たすことによって、例外として認められる場合もあります。
市街化区域では無秩序な街づくりをしないため、そのなかで住居系・商業系・工業系と細かく分類する「用途地域」を指定しています。閑静な戸建てが並ぶ隣に、大きな工場が建たないようにするためです。住居系や商業系など、ある一定に区域で街のイメージをつくり、それぞれ建設する建物の用途や規模を決めています。
家が建てられない?!市街化調整区域とは
写真:ごっちん / PIXTA(ピクスタ)
市街化区域に対して、「市街化調整区域」というところがあります。
これは市街化を抑制している区域です。原則として新しい建物は建てられません。ただし自治体によっては例外として、すでに開発許可を受けている場合(不動産会社が大規模に開発した分譲住宅地など)、農家の分家のための住宅、既存宅地などで、条件を満たすことにより建築が可能になるケースがあります。
今、土地があっても原則として新築や増改築は認められていません。もし増改築や建て替えを行う場合は開発許可という自治体に申請をして許可を得なければなりません。開発許可を得られれば、建物は建てられます。
ただし、特別な事情を除いては、住宅のための宅地造成は許可されないことも知っておきましょう。たとえ許可されても建て替え時に規模が制限される可能性があります。このように、市街化調整区域内の土地は開発や建築行為が抑制されるのです。市街化調整区域は、都市部であってもまだあちこちに点在しています。意外にも、住んでいる近隣にもそういった地域があるかもしれません。
もちろん、ちゃんとした不動産会社であれば、土地を紹介する前に「この場所は市街化調整区域です。建物は一定の条件をクリアしなければ建てられません」と伝えますが、なかには残念ながらそれを最初に言わないところがあります。購入を決め、契約書に判を押す直前になって、「市街化調整区域である」ということを知ってしまうと、それまでの時間や手間がムダになってしまいます。早いうちに、市街化調整区域かどうかは確認しておきましょう。
市街化調整区域の土地は安いが…
写真:Sean Hayashi / PIXTA(ピクスタ)
市街化調整区域の土地価格は、市街化区域に比べてかなり安いので、もし、売りに出されていたら、その金額に目を奪われるかもしれません。
さらに、土地価格が安いため、固定資産税の課税額も大きく下がります。また、市街化調整区域は自治体などの都市計画に該当しないので、都市計画税を支払う義務はありません。
市街化調整区域の土地は、市街地から離れた郊外や農地、山林が広がるエリアにあるので、基本的に不便な場所が多くなっています。
そのため、ガスや水道、電気などのライフラインが整備されていない場合が考えられます。また、将来的に整備が約束されていない場合もあります。せっかく土地を安く購入しても、水道や電気を自己負担で設置しなければならないとなると、予想外の出費が発生する可能性があります。
住宅ローンが利用できない?
写真:Joel / PIXTA(ピクスタ)
市街化調整区域の土地は、金融機関による担保評価が低くなる場合が多いので、住宅ローンの申請が却下されるリスクがあります。もしローンを利用できたとしても、融資額は通常の不動産購入時に比べて少なくなるでしょう。こうした事情が、将来土地を売却したいと思ったときに障害となる可能性があります。地目が「農地」の場合や、面積が広大な土地の場合などは、さらに様々な制約が加わり、より売却を難しくします。
豊かな自然環境が特長の市街化調整区域
市街化調整区域は、一般的に都心から離れた郊外で農地、山林のある土地ということで、一帯には豊かな自然環境が広がるエリアです。交通の便が悪いとか周辺施設が充実していないなどがありますが、のどかで閑静です。
先に市街化調整区域に家を建てる手間とデメリットをお伝えしてきましたが、それをクリアする自信があれば、手間はかかりますものの、豊かな自然環境は、子育て世代にとって適しているかもしれません。
市街化調整区域はどうやって調べる?
●自治体に行ってみよう
市街化調整区域について調べる方法として、まず地方自治体の窓口で確認する方法があります。説明を聞いても専門用語が多くて理解しづらい可能性はありますが、地方自治体による条例や建築基準法に基づく建築協定などに関わる土地については窓口で確認が必要です。
●インターネットを活用しよう
インターネットを利用して、自治体が運営するウェブサイトを閲覧する方法もあります。地域名、市街化調整区域などキーワードを入力し、都市計画マップなどを確認します。
川口市では以下で市街化調整区域が調べられます。
https://kawaguchi.geocloud.jp/webgis/?z=13&ll=35.859786%2C139.724766&t=dm&mp=17&op=70&vlf=-1
●マッチング
川口市では、市街化調整区域の土地を持つ人と、企業などをつなげる「市街化調整区域土地バンク制度」というものがあります。
https://www.city.kawaguchi.lg.jp/soshiki/01130/020/totibankuseido/34488.html
●専門の不動産会社
開発許可など法的な手続きについては、専門の不動産会社に依頼するのがいいでしょう。市街化調整区域の不動産売買は制限が多く手続きは複雑なので、会社によっては取り扱いをしないところもあります。市街化調整区域も多く取り扱っている、経験豊富な不動産会社を探して利用するのが安心です。
市街化調整区域の土地活用
写真:RyoY ArtWorks / PIXTA(ピクスタ)
ここからは、市街化調整区域の土地をお持ちの方に向けて、情報をご紹介しましょう。
前述のとおり、市街化調整区域では原則として建物を建てることができません。そのため、市街化調整区域内での土地活用は難しいのですが、以下の1から3のような方法であれば、活用できる場合があります。
それぞれ許可が必要となる場合や固定資産税が変わってくることがありますので、詳しくは行政や当社にお問い合わせください。
1)太陽光発電
太陽光発電は、市街化調整区域の土地活用としておすすめの方法です。大きな利益を期待するというよりは、集客に関わらず安定した収入が見込めること、メンテナンスなどの手間がほとんどかからないこと、太陽光さえあれば経営できるところなどがメリットです。
立地や集客を気にせずに経営できますが、反面、初期費用が高く回収に時間がかかること、天候の影響を受けやすいこと、売電価格が変動すること、メンテナンスが必要となることなどがマイナス面としてあげられます。
2)駐車場経営
駐車場の経営は市街化調整区域でも可能ですが、集客面に関しては立地が関わるので検討が必要です。コインパーキングにする場合には、設備の設置にある程度の費用がかかりますが、基本的に少ない初期費用で始められます。
3)資材置き場
資材置き場は、建物を建てられない市街化調整区域で利用しやすい方法です。管理の手間はかかりませんが、その分、賃料はそれほど期待できません。近隣に資材置き場を利用してくれそうな会社や店舗があることも重要です。
市街化調整区域ではどうやって建物を建てる?
写真:東北の山親父 / PIXTA(ピクスタ)
市街化調整区域では原則として家を建てることができませんとお伝えしてきました。
それでも、住宅を全く建てられないわけではありません。いろいろな法律をクリアする必要はありますが、可能性はあります。
農家用の住宅や用途変更のない増改築など、建築許可、開発許可が不要な建築物もあるので、まずは自治体窓口で事前に相談、協議を行い、開発許可を得られる可能性を確認します。見込みがある場合は順次、必要な手続きを進めていきます。
市街化調整区域では原則として農業目的以外の開発が抑制されていますが、下記のとおり都市計画法第34条を満たすと認められた場合には、区域内に建物を建築することが可能となります。
・条例で指定した集落地区における開発行為
・条例で用途を限り認められた開発行為
・既存権利の届出に基づく開発行為
・開発審査会で許可を得られた施設
地目をチェックしよう!
写真:東北の山親父 / PIXTA(ピクスタ)
市街化調整区域に限らず、土地の「地目」は不動産売買において重要なポイントです。土地の地目には、宅地・田・畑・山林・雑種地など様々な種類があり、それぞれ規制が違います。対象の不動産がどの地目に該当するのかを、確認しておく必要があります。
「宅地」の場合は、都市計画でその土地が市街化区域・市街化調整区域を指定される以前のものか、以後のものか、どちらにあたるかが重要となってきます。指定される以前から「宅地」の場合は建築許可が得られる対象になるからです。
また、敷地を拡大する場合を除き、元々あった家を建て替えや増改築する場合には、一定の要件を満たすことで建築許可が不要となります。地目が「農地」の場合は基本的に農地としてしか売却できません。売却先が農業従事者に限定されるので、売却しづらいケースが多くなります。また、農地以外の用途で利用するためには、「農地転用」の申請を行う必要があります。農地転用が認められない場合、宅地利用はできないことになります。
開発審査会とは、都市計画法第78条に基づき、開発許可権限を持って自治体に設置される合議制の諮問機関のことです。各自治体によって開発審査会の提案基準があり、審査会の許可を受けて建築が可能になることがあります。いずれにせよ地方自治体によって規制内容が異なる場合もあるので、詳細を事前に確認することが必要です。
市街化調整区域の土地を売却したいときは…
親から土地を相続したものの、「市街化調整区域だった」ということは十分、ありえます。その場合、「早く手放してしまいたい」と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
市街化調整区域の不動産売買は、買主の購入目的によって開発許可の要件が変わるという一面があるので、交渉が始まるまで契約がどう展開するか見通せません。様々な法令や規制が関わることなので、早めに不動産会社に売却を依頼するほうが賢明です。
ここで不動産会社を選ぶことがとても大切になります。市街化調整区域の物件を多く取り扱っていて、困難な状況でも期待に応えてくれそうな、信頼できる不動産会社を見つけましょう。
そもそも市街化調整区域の不動産は流通量が非常に少ないので、手がけた経験のある不動産会社は限られるのが実情です。それは、物件の評価額が低い場合が多く、仲介手数料が安くなってしまうとか、手続きが煩雑だということが理由に挙げられます。
一方で、あえて市街化調整区域を専門に取り扱う不動産会社もあります。依頼しようとしている不動産会社が、市街化調整区域の取り扱いが得意な会社かそうでないか、しっかり見極めることが肝心です。そのために、「市街化調整区域の土地を売買した経験はありますか。それはどの場所でしたか。売買にあたってどのような問題をクリアしましたか」と尋ねてみましょう。経験がある不動産会社であれば、丁寧に答えてくれるはずです。
たとえ新築や建て替えが許可されにくい、売却が困難な土地や家だとしても、経験豊富な不動産会社であれば、専門知識や交渉力を駆使して有効な手段を提案してくれるはず。信頼できる不動産会社を選ぶことが大切です。
記事監修 花井 政樹
株式会社ハナイアーバンプランニング 代表取締役、株式会社花井建設工業 代表取締役
生まれ育った鳩ケ谷で地域のお役に立ちたい思いで平成14年にハナイアーバンプランニングを創業以来、埼玉県鳩ケ谷エリアを中心に埼玉県川口市、さいたま市、越谷市、草加市、戸田市、蕨市、東京都足立区、北区、板橋区のを中心に不動産売却・販売・賃貸管理のお手伝いから建設業、そして任意売却や市街化調整区域・区画整理地に関わるご相談など、解決が難しいご相談にもおこたえし、ご縁の一つひとつを大切にしながら日々奮闘しています。
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